世界で最も速く走る男

今では、知らない人も多くなってきたかもしれないが、世界でいちばん速く走る男というと、私たちが子供の頃のスーパースターは、カール・ルイス。

そして、そのカール・ルイスに勝ったと思われたベン・ジョンソンという人がいたが、ドーピング検査で陽性が出たため、やっぱり世界でいちばん早いのはカール・ルイスだ、ということを改めて印象づけたこともあった。

この出来事が1988年ということだから、私たちは中学生だったはずで、小学校のときには、陸上競技の花形、カール・ルイスはバリバリだったはずだ。

我々夫婦ふたりとも、陸上競技とは無縁なのだが、さすがにカール・ルイスは知っているので、やっぱり陸上競技会のスーパースターだったのだろう。

他のスポーツでも、野球に関心がなくても長嶋、イチローは知っている、ボクシングに興味がなくてもマイク・タイソンは知っている、みたいな感じだろうか。

買い物帰りの車の中で、なぜ、短距離走の話になったのか2人とも思い出せないが、カール・ルイスの話が出たときに「引用が古いなぁ」と2人で時代の流れを少々感じて笑った。

子どものときのイメージが焼き付いていて、とくに関心を持って陸上競技界のことをウォッチしているわけでもないので、情報が更新されていないわけだ。

ホントか嘘か知らないが、カルガモの子どもが初めに見た成鳥を自分の親だと思う、というのに近いのかもしれないなぁなどと話しながら。

しかし、我々の記憶とは無関係に季節は巡り、時間は流れるわけで、世界でいちばん早く走る人の情報も、ちゃんと更新すべく、いまは誰か、という話になった。

私 「えーっと・・・」

嫁 「誰やったかなー・・・」

私 「あ、分かった!」

嫁 「えー!」

私 「しばらく言わんとくわ。ボケ防止、脳トレや」

嫁 「あ~、なんか感じは出てきてるんやけどな~」

私 「感じってどういうことや」

嫁 「いや、ほら、なんかジェットとかいう感じ」

私 「(笑) それは、早いっていうイメージに引っ張られてるだけちゃうか」

嫁 「え~ジェット・・・『J』が付いてない?」

私 「・・・」

嫁 「あ~あかん!ヒントちょうだい」

私 「そやなぁ・・・コーナンとかホームセンターで売ってる」

嫁 「え~なにそれ!(笑)」

私 「ただ、あんたはあまりその売り場らへんには行くことないやろうな」

嫁 「え~っと・・・ドリル!」

私 「(笑) なんかそれも早いっていうか進むイメージに引っ張られてないか・・・でも急接近や」

嫁 「えー、なんなんそのヒント・・・」

私 「世界一の俊足がホームセンターに売ってるってのも変な話やな(笑)」

嫁 「ルイス・グリーン・・・」

私 「いや、カール・ルイスと別の人が混じってる・・・」

嫁 「うーん・・・」

私 「工具じゃない。たとえば、ドリルとかノコギリとか売ってるところに、板とかの材料なんかも置いてるし、いろいろあるやろ」

嫁 「釘!」

私 「(笑) いや、商品を当てるんじゃなくて、世界一速い男の名前や。でも近い。」

嫁 「あ・・・」

私 「分かった?」

嫁 「ボルト!」

私 「・・・(イントネーションが人名じゃなくて部品やな)」

嫁 「ウサイン・ボルトや~」

私 「正解」

嫁 「あははは、クイズ楽しい~もっと出してー!」

私 「いや、そんな都合よく出てこんしやな・・・」

・・・・・

一連のやりとりのなかに、イアン・ソープやアルシンドといった他のスポーツ選手もたくさん出てきたが、何とか正解に辿り着けたのであった。

めでたし、めでたし。

漫画「カバチタレ」

嫁から教えてもらった漫画で「カバチタレ」という作品がある。

原作:田島隆 、作画:東風孝広、監修:青木雄二。

行政書士が奮闘する物語。

青木雄二さんと言えば「ナニワ金融道」が有名だと思う。

どちらも嫁から教えてもらった作品だ。

嫁は漫画好きだが、読んでいる漫画のジャンルが多岐に渡るのではないかと思う。

女性が漫画を読む、ということを想像すると、恋愛もの、女性の仕事、家事育児、といったものがテーマになっているもの、というのが、私にはパッと思い浮かぶ。

もちろん嫁は、そういうのも読んでいるようだが、こと「ナニワ金融道」とか「カバチタレ」といった類のものは、ちょっと路線が違うものだろう。

今や、男も化粧をするのだから、あらゆることで、男性用、女性用という概念自体がなくなってきているのかもしれないな。

ところで、いつぞやの晩酌のときに、カバチタレのシリーズのある回の話が出てきた。

離婚した夫婦がいた。

子供が一人いたが親権は元嫁。

元夫は子供に会いたくてしかたがなかったが、元嫁は会わせてくれない。

しばらくして、それぞれに新しい彼氏、彼女ができるが、元嫁の彼氏は暴力的。

そんな状況から元嫁も、暴力彼氏の感覚に近づいてきてしまう。

元嫁としては子どもが邪魔になる。

そこで、元夫が子どもを引き取ろうかという話が出る。

ところが、こちら側でも問題が発生。

元夫の彼女が、それはイヤだと。

(あぁ、しんど)

子どもが、そっちのけ状態になってしまっているのを見かねた元夫方のお祖父さんが、その子ども(お祖父さんにとっては孫)に、2000万円の遺産を相続させることにしていたそうな。

それが知った、元嫁と暴力彼氏、そして、元夫の彼女。

双方がうちで預かろう、と子どもを獲り合うことに。

・・・・・

いやぁ、ほんまにこんなことがあり得るんやもんなぁ・・・

悲し過ぎる。

これは漫画のストーリーではあるが、ちょっと前に読んだ青木雄二さんのエッセイに、作品で描写しているようなことは「掃いて捨てるほどあることなんや」とのこと。

漫画の話をしてくれただけだったのだが、私の方が腹立ってきて、嫁の話の途中でいろいろと「それはアカン!」「なんやそれ!」などとごちゃごちゃ言っていたように思う。

漫画でも小説でも映画でも、ある程度、感情移入しないことには面白くないと思うが、酔っぱらってくると、私はその傾向がさらに増して、そのときの感情をそのまま出しがちだ。

こういう話の中にも、お互いの考え方、価値観というものが見え隠れしたりするのかもしれない。

この日の私のセリフに対し、嫁はどう思ったのだろう。

翌日も、とくに敬遠されている雰囲気はなかったので、ショックだったとか、びっくりした、ということはなかったのだろうと思うが。

いやぁ、いろいろ考えさせられます。

しかも自分がこの話の登場人物の立場だったら、今考えているような行動を取れるのだろうか、など…

漫画は、COOL JAPANのジャンルかもしれないが、萌え系よりは、カバチタレとかナニワ金融道とかの方が、私は染みるなぁ。

おりひめ と ひこぼし

今年の七夕の日は、私たちの住んでいるところでは雨は降らず、晴れの天気だった。

ということは、話によれば、年に一度だけ会うことを許されている、おりひめとひこぼしは、顔を合わせたことになるのだろう。

子供の頃に聞いた昔話、お伽話の類は、理屈で考えるとツッコミどころ満載であるものがほとんどだと思う。

おりひめとひこぼしの話もそうだが、雲の上の人?神さま?星?ということから、曇りであろうと、雨であろうと、その上で会えているはずで、地上にいる私たちから見えるかどうか、ということだ。

逆に、おりひめとひこぼし側からすると、晴れの日は、地上から見られた状態で会うということになり、むしろ七夕の日は、曇りや雨の方が、彼女らにとっては有り難いのではないかとさえ思う。

いずれにせよ、年に一度しか会えないというのは気の毒なものだ。

嫁とそんな話をしていたら、嫁が言う。

嫁 「一年に一度とかだったらたくさん話することがあって忙しいよなぁ。順序立てて話さんと時間が足りないし。『それでは私の方からお話しさせて頂きます。四半期ごとに区切ってまずば第1四半期のことから報告いたしましょう』とか」

私 「そして1年の暮らし向き、良し悪しをグラフ化したのがこちらです!言うてな」

嫁 「なんでジョブズ・スタイルなん?和牛や!」

おりひめとひこぼしは、1年に1度、どんな話をしているのだろう。

彼女ら彼らの世界も、近代化しているのかもしれない。

もしかすると、管理の目を盗んで、しょっちゅうスカイプやフェイスタイムなどで間接的に顔を合わせているかもしれない。

いや、ちょっと待てよ・・・天空の話であるとすれば、星の歴史から見て1年なんてあっちゅう間、というのかもしれない。

もしそうであれば、1年に1度しか会えないから可愛そう、と思っているのは地上の我々だけで、私らの感覚に置き換えると、毎日会っている、それこそ夫婦のような感じかもしれない。

そしたらお互いに噛み合わないことも、機嫌悪いこともあるだろう。

そうだ、夫婦の関係もそういうふうに考えてみるのも良いのかもしれない。

1日を1年に例えて、ある日もし喧嘩してふて寝したとしても、朝起きたときには1年会っていなかったと想像して「あぁ1年前は喧嘩して別れたけど今年は仲良くやりたいな」と。

「こんな1年もういやや…」となれば、お互い協力できるんではないか。

っていうか、毎日心がけたらよろしやんか・・・

当朝祭

こないだ久しぶりの旅行へ出かけたとき、目的地へ向かう前に、土日によく行くショッピングモールへ寄った。

どうしてかというと、嫁がタピオカ入りの飲み物を飲みたいと言ったからだ。

いまタピオカが流行っているとのことで、そう言えば、そこの店にはいつも行列が出来ているなぁとは思っていた。

買い物でも飲食店でも、我々夫婦は並ぶのが嫌いだ。

例えば「これを食べに行こう!」と出かけたとしても、めちゃくちゃ並んでいたら、顔を見合わせて「やめとこか…」となることがある。

つい先日も薬局で、歯ブラシ、歯磨き粉などを持ってレジまで行ったが、あまりに並んでいるのを見て陳列台に返しに行った次第だ。

でも、タピオカ目指して行ったその日は、開店直後に行ったこともあって、とても空いていて並ばずに買うことができた。

旅の幸先いいなぁとか何とか言いながら、休憩スペースのようなところで飲んでみる。

「なるほどこういう感じのやつか」と言いつつ一緒に飲み終え、さてさてそれでは!ということで旅行先に向かったのだった。

いつも行くところに寄ってから旅先へ向かうのも、日常から非日常へ出て行く感じになって出かけるときには結構オススメかもしれない。

そんな始まりで、1泊2日の旅行を過ごしたわけだが、この一連のタピオカのことを後日の晩酌で話していた。

私 「旅行前にいつも行くショッピングモールに寄るのも面白いなぁ。後から買い物行く度に旅行のこと思い出すわ。なんか前夜祭みたいでそれも楽しいよな」

嫁 「うん・・・」

私 「ん?どうかした?」

嫁 「うん。朝やったから、前朝祭やわ」

私 「ははは、あんたは壇蜜やのうて厳密やなぁ」

嫁 「・・・しょうもない」

私 「あ、ちゃうわ、当日やったから当朝祭や!」

嫁 「・・・もういい」

とか言いながらの振り返り。

繰り返しですが、旅行の前に日常的な場所を経由して出かけるというのも、いつもと違うちょっとしたスパイスになっていいもんですよ。

前日なら、前朝祭、前昼祭、前夜祭。

当日なら、当朝祭、当昼祭、当夜祭。

これは好きに使い分けて頂ければよろしいかと。