なれそめ(前編)

嫁との出会いは、高校時代。

嫁はひとつ上の先輩で、学校の部活で知り合った。

会ったときに「お…」と、すでに好意を持ったのは覚えているが、先輩というのがあってか、恋愛対象としてではなく、ちょっとした憧れの存在という感じで捉えていたように思う。

春に私が新入生として入部してから1年半を過ぎた頃には、嫁も含めて、クラブの皆んなとそれなりに仲良くなっていて、嫁のことを「やっぱええな〜」と思っていた。

嫁と付き合い始めたのは、私が2年生、嫁が3年生の時で、晩夏。

付き合い始めた季節を覚えているのは、部活の皆で行ったキャンプのあとだったからだ。

岩がゴツゴツとあって、切り立った岩の上から川に飛び込んだりできる場所で、飯ごう炊飯などもやって楽しく過ごした。

記憶が曖昧だが、飯ごう炊飯なら、たぶんカレーを作って食ったんだろうなぁ。

そのときに、プラスチックの皿やらスプーンやらが準備されていて、それが嫁の家の持ち物だったのかどうか定かではないが、最終的に嫁の家に持っていく段取りになっている、ということだった。

そのことを知った私は、急遽、その食器類を自分が持ち帰る、そして、先輩(嫁)の家に届けるところまでやる、と立候補した。

はっきり覚えていないが、きっと私よりも嫁の家に近い人がいただろうけど「いいよいいよ『俺が』持って帰るから!」とその仕事を勝ち獲ったはずだ。

おそらく、本来、仕事とはそういうものだ。

私の性格からすると珍しく?「俺が俺が」が出ていて、ちょっと不自然だったかもしれない。

そういうキッカケをも与えてくれたキャンプではあったが、ショッキングなこともあった。

大きな岩の上に何人か女子先輩たちが仰向けに寝転がり、星空を眺めながら話をしていて、私もたまたま近くにいて聞くともなしに聞いていた。

すると、

A先輩「◯◯ちゃん(嫁)、彼とはどうなっってんのよ?」

私「・・・!!」

嫁「いや、なんもないって!」

え?なに?彼氏おんの!?

まぁ、好きだという気持ちは確かに持っていたが、付き合いたい、ということまではどういうわけか考えるに及んでいなかったのだが、

「え〜マジかぁ…あ〜そんなんやぁ…ま〜そうやんなぁ…いやぁ〜そっかぁ…」

と満天の夜空の下で、何とか平常心を保とうとしたのであった。

翌日は、そのダメージが出たのか、川にダイブする時に尖った岩で足の親指切るわ、管理事務所みたいなところでヨードチンキみたいな液体で荒治療されるわ、痛そうな顔してると「そらこんだけ切ってるから痛いわ!ガッハッハッ!」とおっさんに面白がられるわで、散々だった。

(なんか足の指が痛くなってきた…)

翌日は切ったとこが痛いし泳ぐのをちょっと控えて、岩の上から写真係などしつつ大人しめに過ごしたが、後から見ると、私が撮った写真には、さりげなく嫁がどこかに写っていたようだ。

(つづく)

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