問題発言

よくニュースなどで、有名人が言ったことを、問題発言だということで、大きく取り上げているのを見聞きする。

確かにテレビとかなら、番組によっては相応しくないかもしれない場合があるとは思うけれども、ここ最近は、言葉狩りというか、加熱し過ぎているんじゃないかと思うこともある。

発言した人がどういう意図でそう言ったのかもあるし、聞く側も、人によって捉え方が違うので、何とも難儀なテーマだなと。

ただ単に、言葉だけを取り上げて、文脈や背景、そう言うに至った経緯などを取り除いてしまうと、本題とは別の問題を新しく作ってしまうことがあるようにも思う。

さて、先日、繁華街へ繰り出して歩道橋を歩いていたとき、その先の高層マンションが新築分譲されていて、モデルルーム案内の看板広告が大々的に出されていた。

それを見た嫁は

「こんなとこ住みたないわー!」

と比較的大きな声で言い放った。

私はとっさに笑いつつ

「いま、あんたの周りで歩いてる人、モデルルーム見にいく人、きっとおるで」と。

嫁はパッと口に手を当て

「だって、忘れもんしたとき取りに帰るの大変やん…」

と小声でその理由を告げる。

マンションの営業マンがいたら、営業妨害だと言われるところだったかもしれない。

またあるとき、嫁が友達に会いに行くにあたってお土産を持って行くということで買い物に付き合っていた。

ちょうどそのとき神戸にいたということもあり、神戸土産の定番のひとつ、ゴーフルなんか無難かもね、という話になった。

いろんなセットがある中、ショーウィンドウを2人で見ながら、嫁が選んだのは、ミニサイズのゴーフル詰め合わせ。

スタンダードなのは、お好み焼きくらい?人の顔くらい?の大きさのものなので、それの方が面白くていいんじゃない?と私が言うと嫁は、

「普通サイズのやつ食べてたら飽きてくるやろ!」

と比較的大声で言い放った。

私は吹き出しそうになりながらも、嫁に向かって子供に「メッ!」と言うような顔をしたものだから、嫁はハッとした感じで口に手を当てた。

いちおう私は、何人かいる店員さんの方を見やって、聞こえていたかどうかを確かめてみたが、とくにムッとしたような感じの店員さんも見当たらず。

結局ミニサイズのゴーフルを買ってその場を離れた。

ちゃんと思い出せば、こう言ったことはもっとたくさんあるだろうと思うし、これから先もきっとあるはずだ。

嫁なら王様に「どうして裸なの?」と聞くんだろうなと思う。

有名人の言動も、率直なもの、悪意のないものであれば、そんなに叩かなくてもいいように思えたりする。

テレビ画面の下に「あくまでも個人の見解です」とか出ていたりするのを見かけると、嫁には、それを書いたゼッケンみたいなものをつけておいたら、余計な誤解を招かなくていいんじゃないかと思う。

隠された才能

人にはそれぞれ、習慣や癖といったものが少なからずあると思う。

話をしているときに鼻を触るとか髪を触るとか、くしゃみの後に「オラァ〜ッ!」と言うとか、ペンを持ったら回してしまうとか。

無意識のうちにやっている行動は少なくないはずだし、人に言われて「そんなしょっちゅうやってる?」と思ってしまうものもあるはず。

また、座っていて足を組むときにどちらの足を上にするかとか、歩き出すときどちらの足から出すかとか・・・

やってることは認識できても「いつもどうしてるっけ?」みたいなこともあるものだ。

だからどうということはないのだが、先日、嫁から聞かれたことがある。

あなたには「集めてしまうもの」とか「捨てられないもの」があるか?と。

ささっと考えたものの思い浮かばないので「そんなんないで」と答えた。

それを聞いて「ふふっ」と笑う嫁をよそに、いちおう一生懸命に考えてみた。

すると、そう言えば、組み立て家具を買ったりしたときに、余ったネジなどを捨てずに取っておくクセがあるかなぁ、工具箱のところに結構たまってるなぁ、とは言え、ネジが好きかと言われるとそうでもないよなぁとか思いつつ、

「ネジ」

と答えた。

すると嫁は、

「ネジ? うーん、ネジかぁ…」

と、どうもしっくり来ていない様子である。

そのあとは何も思いつかず、改めて、

「やっぱりないわ」

しばらくお互いのそれぞれの時間が過ぎたあとに嫁はこう言った。

「集めてしまうもの、捨てられないものには、その人の才能と関連のあることが隠されているらしいよ」

それが本当だとすると、私には才能と呼べるものがないのか、あるいは、ネジに極めて薄っすらと関連のある何かに才能があるのかどうか、ということである。

嫁は、私がわりと素早く「そんなもんない」と答えたときに、思わず吹いてしまっていたのだ。

私に何の才能もないことが判明してしまったことは、とても残念なことだ。

だがそれ以上に、自分の旦那に何の才能もないことを知って思わず笑ってしまう嫁というのは、なんともポジティブな人物だなと思うのである。

嫁の相づち

夫婦の会話、という話から、ふと思い出したことがある。

自分たち夫婦は、会話と言えるのかどうか分からない、他愛のない言葉を交わしているか、単にふざけ合っているだけ、という感じで、内容は本当に思い出すのが難しいくらいだ。

それでも、「夫婦でどんな会話してる?」と聞かれたときに、「たとえば・・・」と答えられるようなものがないものかと考えていると、気づいたことがある。

私のしゃべることは「99%しょうもない」と言われていることは書いたが、そういえば、嫁の返事がいわゆる「生返事」という感じのときが結構ある。

私「〇✕△でやな、◇✕🔳※となったんや」

嫁「うん、うん」

これだけ見ると、甲斐甲斐しく聞いてくれている、見方によれば、同意までしてくれているようにも見える。

面倒くさそうな相づちに聞こえたこともあんまり記憶に無いが、ただ、どうも話に注意を向けていない感じがあったときに、ちょっと試しにこういう聞き方をしてみた。

私「〇✕△でやな、◇✕🔳※となったんやわ。どない思う?」

嫁「うん、うん」

・・・ 会話はキャッチボールとも言われるのに、雰囲気的には、私が投げたボールを棒立ち状態で見過ごしているような。

確認のため、

私「聞こえてる?」

嫁「ん?」

私「なぁ、俺いまなんて聞いた?」

嫁「あ、ごめん、聞いてなかった!ははは!なんて?なんて?」

私「いや、まぁいいわ、しょうもないことやし」

嫁の良いところ(?)のひとつは、聞いていなかったことを隠すのではなく、そのまま認めるところだ。

いわゆるゴマカシみたいなことがない、というか、出来ないタイプだと思う。

・・・いやいや、嫁を褒めるコーナーではなく、やっぱり聞いていないことが分かった。

長年付き合っているために、私の話のしょうもない部分である99%を、聞いていないけれども聞いているように振る舞える「スキル」を身につけたのだ。

こういう会話?は、結構日常的にしているように思う。

でも、私の方も、嫁から「自分って人の話あんまり聞いてへんよね」と言われることがあるのも思い出した。

我々夫婦は、本当に会話ができているのかはハッキリしないが、こういうやりとりはしていると言えそうです。