こめかみをめぐる攻防

私はよく嫁に頬ずりのようなことをする。

嫁という対象を、触覚、嗅覚、またその空気感を感覚的に捉えることができる感じがして好きなのである。

もともとどういうふうにしていたか分からなくなってしまっているが、今の形態は、正確に言うと頬ずりとは違っている。

自分のこめかみを、嫁のこめかみにくっつける、というやり方だ。

嫁が、本を読んでいるとき、メモ書きをしているとき、テレビを見ているとき、台所に立っているとき、寝ているとき・・・あらゆる場面で、狙う。

「また来たぁ!」
「やられた!」
「狙われてる…!」

などと言う。

だが、その頻度が多いこともあってか、くっついて行っても反応せず、本を読んでいるときであれば、何事も起こっていないように、本を読み続ける、というようなこともよくある。

台所に立っているときなどは、作業で動かないといけないわけだが、私がこめかみをくっつけている方へも、まるで何もないかのごとく、ぐいっと押し返してくる。

とても邪魔だろうと思うのだが、その押し返される感覚も私にとっては好物なのだ。

ただ、当たり前だが、時にはうっとおしいこともあるようで、顔を近づけると、顔を背けたり、避けたりすることもあるし、押し返してきて、あっち行けというのを示すこともある。

ちょっと前になるが、こめかみへくっついてくる私の対処方法で、別の方法を編み出したことがあった。

いつものように近寄っていくと「来る…!」と察知した嫁は、こめかみに手を当て「こめガーード!」と言った。

私 「(笑)なんて?」

嫁 「こめガード…」

私 「こめかみをガードするってこと?」

嫁 「うん」

私 「こめかみガードじゃないと分かりにくくない?」

嫁 「…」

私 「でもそれ、ずっとしとかなアカンから大変やな」

と、嫁は「こめガード」をしたままそんなやりとりをした。

しばらくして、嫁が「こめガード」を外した瞬間、

私 「『こめガード』破れたり!」

嫁 「あーやられたー!」

・・・。

その防御も万全ではなく、私によって1日にして攻略されてしまったのである。

信用第一第一ってか

私と同じように嫁も年齢を重ねているんだなぁと、嫁の誕生日を迎えたあと、改めて思った。

我々が結婚した年に生まれた姪っ子の1人はもう女子大生、もう少ししたら一緒に酒でも飲めるくらいなんだから、そりゃそうよなぁ。

ところで、嫁が誕生日の日に、じーんときた、という事を言ったのがキッカケになったんだと思うのだが、槇原敬之さんの歌を久々に聞いた。

というのは、嫁と付き合ってほどない頃の私の誕生日に、槇原さんの「どんなときも。」のシングルCDをプレゼントしてくれた、ということがあって、久々に聞いてみようと思ったのだ。

そういや、それだけではなく、ケーキまで焼いて私の家を訪ねて来てくれたのだった。

当時はスマホなんてないし、携帯電話、ガラケーさえない、ポケベルってあったと思うが、我々は持ってなかったし、私の家を知らないはずの嫁は、地図で調べたんだろうと思う。

今、同じようなことをしてくれるとは考えられない!

暑い、寒い、遠い、しんどい、のどれかだろう。

これを書きながら嫁に聞くと「そのとおり!」と言った。

話を戻そう。

槇原敬之さんの歌で「NG」というタイトルのものがあり、その歌詞の一部に、

二人で暮した日々よりも
誰かの噂を信じた
僕になぜうつむいたままで
言い返せなかったの

というところがある。

それが流れたときにふと、私が「そらアカンわなぁ…」とつぶやいたようで、

嫁 「なんか、ぼやき漫才みたいやで(笑)」

と。

私 「そういうことは本人にちゃんと確認せにゃアカンやろ」

嫁 「まぁそうかもね」

私 「例えばやで、もし俺に疑わしい噂があったらアンタはたぶん直接聞くやろ?」

嫁 「うん」

私 「ほんで『何もないで』と言うたら?」

嫁 「『そうやんな〜!』って言うと思う」

私 「そんな素直に信じられたら、もし何か後ろめたいことがあったとしたら、俺、後々めっちゃキツなるなぁ(笑)」

嫁は基本的に、無条件に近いくらいで私を信用してくれていると感じるので、嘘をつくと、こちらの良心が痛むわけだ。

そのくらいの良心はあるつもりだ。

あー、嫁には正直であろうと、改めて思った私だった。

46th QUEST

私は、人の誕生日をはじめとする記念日のようなときのプレゼントに対して、どうも苦手意識みたいなものがある。

相手が何を欲しいのか、必要と思ってるものは何なのか、喜ぶものは何なのか・・・難しく考え過ぎるのだと思うが、よく分からなくなる。

例えば嫁が、カバンを新調したいというようなことを言っていたのを覚えていたとしても、私が選んで買うより、自分で気に入ったものを買う方がほぼ間違いなく良いと考える。

特に、いつも使うものだと絶対そうだと思うのだ。

付き合い始めのカップルなら、彼氏にもらったカバン、少々使いにくいとかがあっても、喜んで使うかもしれない。

いや、それでも私なんかは、やっぱりそういう使用頻度が高いもので、個人の好みのデザインと実用性が不可欠なものは、やっぱり本人が選ぶのがいちばんだと考える。

それなら、日によって替える?ような、アクセサリーなどはどうか。

そういうのも考えることはあるのだが「これ、君に似合うと思って…」と真顔で言えるようなタイプでもないし、人にこれが似合う、というような発想があまり出てこない。

そもそも、小物だって本人の細かい嗜好があるだろうと思うのだ。

いちばん現実的なのが、気に入ったものを買うお金をプレゼントすればいいと思うのだが、それはそれでアリだと思うものの、プレゼントらしくないよなぁという感覚は持っている。

そういう時は、メッセージカードとかに「カバン購入券」(あるいは金欠のときは「補助券」)と書いてプレゼントするようなことは、確か、やったことがあった気がする。

ところで、嫁の46回目の誕生日にやってみたのは、「46th QUEST」と題した宝探しだった。

メモ用紙に「洗面台の前に立つべし」とか「机の引き出しをチェックせよ」みたいな事を書いておき、それを順に進めていくと、隠しているプレゼントにあたどり着ける、というものだ。

品物は「プリングルスのオニオンサワー味」と「やわらぎ穂先メンマ(お徳用)」だ。

モノの価値よりもゲーム性を重視した、ということになるか。

朝起きた嫁は、枕元に「46th QUEST」と書かれた紙があるのを見つけ、

嫁 「あー!冒険の書がある!」

と、第一声。

もしかすると、枕元に置いていることに気づかないことも考えていたので、始めのステップはクリアした。

そして途中まで進んだときに、

嫁 「このページまで来たで!楽しいなー」

と、喜んでくれているようでひと安心。

着々とシナリオを進めていきながら

嫁 「あー、もうすぐ終わってしまうー、なんかもったいないなー」

と。

私 「進めてもらわんかったら余計もったいないがな…」

ということで順調に、2つのお宝をゲットして、最後に「おめでとう、これからもよろしく」的なメモ書きを見つけてゴール。

嫁は「楽しかったー」「またやってー」「いつ準備したん?」「結構大変やったんちゃう?」といろいろ聞いてきたが、喜んでもらえたのは良かったなと。

ふと見ると、涙している嫁。

私 「えー?どないしてん?」

嫁 「なんか、じーんときてもうた」

私 「そんなにメンマ好きやったかいな?」

嫁 「ははは、好きやけど…」

私 「あ、メンマがお徳用でデカめやったからか」

嫁 「メンマじゃないって…」

とチャカしつつも、途中で止まることなく進められる作りになっていて良かった。

こういうプレゼントのやり方なら、自分も遊びながら、かつ、私個人の経済力で出来て、私向きかもしれない。

相手の好き嫌いがあるだろうから、こういうのが喜ばれるかとうかは人によると思うが、プレゼントが苦手、どうしたらいいか分からない人は、モノ以外のことを考えるのもありかもしれない。

喜んでもらえたようなのでひと安心だ。

空想 離婚調停

以前、嫁が読んでた漫画で「うちの妻ってどうでしょう?」という福満しげゆきさんの作品のことを書いたことがあったと思う。

私は結構好きな漫画なのだが、主人公=作者の自虐的な表現もあって笑えるところがあり、その中で「こんなことしてたら離婚されてしまう…!」というのがある。

私もごくたまに嫁との会話の中で使わせてもらっており、嫁も多少なりとも笑ってくれる。

だが、離婚ということをよく考えてみたとき、すんなり行く(というのもなんだか寂しい気もするけど)場合もあるにはあるだろうけれど、大概は何かモメることが出てくるもんだろうと思う。

離婚でモメるとなると、裁判というのが連想される。

それ考えると、嫁は私と離婚したくても出来ないだろうと思うのだ。

場所は裁判所。

嫁 「私がいろいろやってるのに、いつもふざけて、もう嫌なんですよ! もううんざりなんです!」

裁判官 「どうですか?」

私 「いえ、いつも落ち着いて話そうと言っているのですが、こうやって大声でまくし立てるんで、冷静に話し合いができないんです」

裁判官 「どうですか?」

嫁 「いや!違うやん!今はそうやってちゃんとしてる風にしてるだけやん!外ではすましててウチではダラダラしてふざけてるやんか!」

私 (耳に手をあてて困った顔をする)

裁判官 「どうですか?」

私 「あ、すみません。彼女はこうやっていつも癇癪を起こしたようになって、でも、可哀想だと思うんです。私の度量がないのかもしれませんが、努力していこうと思うんです、それに…」

嫁 「違うやんか!私がまじめに話ししても聞かへんやん!」

裁判官 「静かに。少し旦那さんのお話を聞いてあげてはいかがですか?」

嫁 「…!」

私 「いえ、嫁に話させてあげてください」

嫁 「だからさっきから言ってるでしょ!いつも茶化して、なんの話してるか分からんようにするやんか!全然違う!」

私 「皆さんの前であんまり大声あげない方がいいよ、ウチに帰って1度ゆっくり話さないか?」

裁判官 「そうされた方がいいのかもしれませんね」

・・・

という展開を想定しているのである。

梅干しのくじ引き

しばらく暖かい日が続いていたし、お湯割りを飲む感じにはならなかったのだが、朝晩がかなり涼しくなってきて、あったまりたいなぁと思うくらいになってきた。

で、焼酎に入れる用に梅干しを購入。

甘いやつじゃないものを。

お、何かくじが付いているではないか。

懸賞好きの私としては、こういうのもちょっと嬉しい。

さっそくめくってみる。

しばらく眺めていると、嫁が見に来てひとこと、

嫁 「えらいおっきい字やね」

「ハズレやん!わはは!」と言わないのは嫁の気遣いなのか、普通の感想なのか。

嫁も俺も、楽しいことが好きなんのは一致していると思うのだ。

にわかにズレてもそれが楽しいのだと思うんだよなぁ。