隠された才能

人にはそれぞれ、習慣や癖といったものが少なからずあると思う。

話をしているときに鼻を触るとか髪を触るとか、くしゃみの後に「オラァ〜ッ!」と言うとか、ペンを持ったら回してしまうとか。

無意識のうちにやっている行動は少なくないはずだし、人に言われて「そんなしょっちゅうやってる?」と思ってしまうものもあるはず。

また、座っていて足を組むときにどちらの足を上にするかとか、歩き出すときどちらの足から出すかとか・・・

やってることは認識できても「いつもどうしてるっけ?」みたいなこともあるものだ。

だからどうということはないのだが、先日、嫁から聞かれたことがある。

あなたには「集めてしまうもの」とか「捨てられないもの」があるか?と。

ささっと考えたものの思い浮かばないので「そんなんないで」と答えた。

それを聞いて「ふふっ」と笑う嫁をよそに、いちおう一生懸命に考えてみた。

すると、そう言えば、組み立て家具を買ったりしたときに、余ったネジなどを捨てずに取っておくクセがあるかなぁ、工具箱のところに結構たまってるなぁ、とは言え、ネジが好きかと言われるとそうでもないよなぁとか思いつつ、

「ネジ」

と答えた。

すると嫁は、

「ネジ? うーん、ネジかぁ…」

と、どうもしっくり来ていない様子である。

そのあとは何も思いつかず、改めて、

「やっぱりないわ」

しばらくお互いのそれぞれの時間が過ぎたあとに嫁はこう言った。

「集めてしまうもの、捨てられないものには、その人の才能と関連のあることが隠されているらしいよ」

それが本当だとすると、私には才能と呼べるものがないのか、あるいは、ネジに極めて薄っすらと関連のある何かに才能があるのかどうか、ということである。

嫁は、私がわりと素早く「そんなもんない」と答えたときに、思わず吹いてしまっていたのだ。

私に何の才能もないことが判明してしまったことは、とても残念なことだ。

だがそれ以上に、自分の旦那に何の才能もないことを知って思わず笑ってしまう嫁というのは、なんともポジティブな人物だなと思うのである。