あの子はいまも絵を描いているんだろうか

嫁 「高校のときさぁ」

私 「うん」

嫁 「クラスでちょっと変わり者というか、ちょっとういてる感じの女の子がいてんけど」

私 「ほぉ」

嫁 「その子、めちゃくちゃ絵がうまくて」

私 「へぇー」

嫁 「文化祭でクラスででっかい垂れ幕作ることがあって」

私 「そんなんあったか」

嫁 「その女の子がデザインして、なんか浮世絵みたいなすごいやつ」

私 「大きい絵を描くのってなかなか難しいもんなぁ」

嫁 「その子が下書きして、みんなで色塗って」

私 「文化祭って感じやな」

嫁 「皆んなから『うわ〜すげぇ〜』とか声が上がってその子がちょっとはにかんだりしてて」

私 「いいクラスやなぁ、日頃ういてても適材適所というか」

嫁 「色塗りも『ここ何色?』とか聞かれて『そこは青で…』とか言ってたけど、ほんまは『あーそこはそうじゃないんだけどなぁ…』とか思ってたんちゃうかなとか(笑)」

私 「皆んなで作るやつはなぁ(笑)」

嫁 「これ、なんかよく思い出すわぁ」

私 「そうなんや、ええ話や」

嫁 「うん」

私 「絵の仕事したりしてんのかなぁ」

嫁 「それで稼いでるかどうかは分からへんけど、絵は描いてるような気がするわぁ」

私 「そうかもなぁ」

・・・

しょっちゅう行くショッピングモールのフードコートで、昼飯を食べていたときに嫁がしてくれた話。

何となく私も、その人は今でも絵を描いているような、あるいは、描いていて欲しいような、そんな気がするのである。