嫁を匂う

嫁が言っていたことだったと思うが、「におい」に対する感覚は、人の本能的なものであるということらしい。

「におい」を漢字にするときに、「匂い」「臭い」とあるようだが、前者の方は心地よく感じるときに使い、後者はその反対だということが、漢字変換するときの説明に出ていた。

確かに「臭い」と書くと「クサい」とも読めるみたいだし、そういう使い分けになっているのだろう。

人にもそれぞれ持っている「におい」があって、それは結構、その人固有のものではないかと思う。

私は香水の類はあんまり好きではないのだが、女性の場合は、おしゃれや身だしなみということで、香水をつけている人は多いだろう。

それこそ、ささっとすれ違ったときにふわっと香るくらいなのは、むしろ好印象を持つことはあるかもしれないので、否定するつもりは全くないが、私個人としては、別につけなくていいのじゃないかと思ったりする。

香水までつけなくても、洗濯物の洗剤のにおいとか、シャンプーのにおいとかで十分な気がするのだ。

とはいえ、さすがに、すれ違ったときに「くっさ!」となるくらいなら、ちょっと香水でもつけていた方がいいのかもしれないが、そこまでになるには、相当の期間、風呂に入らないなどしないといけないだろうし。

勤め先とかに、まさに獣のにおいを発しながらうろうろしている人なんて、そうそういないですもんね。

そう、いずれにしても、香水のにおい、洗濯物のにおい、シャンプーのにおい、などなど、ふわっと匂うのは感じがいいとは思うものの、それは、市販のものであって、その人じゃなくてもその香りは出せるわけで、においに注目する場合、その人じゃなくてもいいことになる。

ところで、私は、嫁のにおいが好きである。 自分にとっては良い感覚なので「嫁の匂い」と書くのがいいのだろう。

もともとそんなことをずっと感じてきていたわけではなかったと思うし、匂いが好きだから付き合った、匂いが好みだったから結婚した、というわけではなかったはずだが、気がつけばよく嫁を匂っている。

嫁が本を読んでいるとき、パソコンをしているとき、寝ているとき、いろんなときに、背中を匂ったり、こめかみ辺りを匂ったりする。

寝ているときなどは、ほとんど動かないので匂い放題、狙い時である。

面白がって「あんたの体臭好きやわ」と言うと、「『体臭』っていわんといてよ、クサいみたいやん」と言われる。

確かに、「体臭」で使われる漢字は、クサい方の漢字なんだな・・・体臭よりもいい表現の仕方があればいいが。

エスカレートして、靴下を狙うこともあった。

さすがに「イヤや」「ヤメて」「変態やん」などと言う。

その理由は「クサいから」ということだが、「クサいかどうかはこっちが決めること」「もしクサかったとしても、それは私がクサいだけであって嫁には被害がないことだ」と主張するも、「なんかイヤ!」とのこと。

こうして文字に書き起こしてみると、確かに私が変態の様相を呈しているようにも思える。

ただ、とくに靴下を好物にしているわけではないし、嫌がる嫁の靴下を奪いとって匂おうとも思わないので、最近はそれは控えている。

そんなこんなで、よく嫁を匂う私だが、それによって、「安心感」や「落ち着き」を得ている感じがする。

いつも匂わせてくれてありがとう。

これからもよろしくお願いします。